第173話 そんなものでは、終われない

 超神速


 かつて、この斬撃は銀の剣を砕き、両断りょうだんしたが……

 

 今、ヒサヒト先輩は斬撃を受けとめ、しりぞくだけで耐えてみせる。


 【人体改造】の恩恵おんけいで常人をはるかに超える身体能力を持っているとはいえ、ヒサヒト先輩はレイジのような究極のインチキ魔法能力を持っているわけではない。


 だというのに、この人は、俺と【偽虎】の全力を汗ひとつ流さず対処する。


「っ!」


 超神速と全力の攻勢を連続させて、俺はヒサヒト先輩にインファイトを挑んだ。


 しかし、一度、二度、三度と斬撃を繰り返す中で、俺は嫌な感じをあじわう。


 手ごたえがまるでないのだ。

 暖簾のれんに腕押しやなぎに風というべきか。


 俺だけがスタミナを消費するばかりで、ヒサヒト先輩には切り傷ひとつ作れない。


「終われませんよ。そんなものでは、僕は終わってあげられない」


 反撃の一撃がさしこまれた!


 不意を打った一撃を、俺はとっさの反射で受け太刀する。

 望まず、競り合いになった。


 【偽虎】と銀の剣で押し合う俺たちは、至近距離で見合う。

 ヒサヒト先輩は、俺をにらむことさえしない冷静で、言う。


「頃合いか。それがキミの全力ならば、僕の本気をお見せしましょう」

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