最強

第171話 最強の名を

「待っていましたよ」


 決勝戦の日、俺がグラウンドをおとずれたとき、ヒサヒト先輩が待っていた。


 審判役の教師も、学園長も、生徒たちも、みなが戦いのはじまりを見守っている。


 能力者校内選抜大会、決勝戦、学園最強の能力者を決する舞台にふさわしい緊張感だ。


 もはや余計な言葉は必要ではない。


 俺はヒサヒト先輩と向かい合い、試合開始の合図を待つ。


「決勝戦をはじめます。双方そうほう、合意とみてよろしいですね?」


 審判役の教師が、硬い声で言った。


 審判が一歩をしりぞいたのは、戦いに巻き込まれないようにするためか。


 最弱と名高いレベルゼロと、最強の名を冠するレベル9の戦いだ。


 俺は【偽虎】を呼び出した。


 ヒサヒト先輩も、銀の剣を呼び出した。


 互いが全力をためらう理由はひとつもない。


 声援も、野次も、今はひとつも聞こえない。


 静かな熱狂、身を切るような緊迫が場を満たす、その時に……


 俺は、戦う相手に、誓いの言葉を伝える。


「ヒサヒト先輩、俺は、あなたを倒します」

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