第168話 キミは似ている

「青虎くん、将棋同好会を代表して、私からも一言だよ!」


 呼んでいないのだが、アスカ先輩があらわれた。

 そろそろ下校したいのだが、アスカ先輩が許してくれない。


「ヒサヒト先輩は、アスカ先輩の想い人でしたね」


「そうだね。やさしくて、かっこいい、私の自慢の幼馴染だよ」


 「見向きしてもらえないけどねー」と自虐して、アスカ先輩が苦く笑った。


「青虎くん、キミはヒサヒトくんに似ている。前にも言ったね」


「それは俺が、無能力者レベルゼロだからですか?」


「それもあるけど、身にまとう雰囲気みたいなものが、似ているんだよね。卑屈で、自分の殻に閉じこもって、本心では誰も信じていなさそうな、そういうところ」


 手厳しいな。当たらずとも遠からずなあたり、この人はよく他人を見ている。


「だけど、青虎くんは変わったね」


「そうでしょうか?」


「うん、部室でヒサヒトくんに勝つと言ってくれた時、私はうれしかったよ。今の青虎くんは、きっとヒサヒトくんより、ずっと、ずっと強くてカッコいい、一人前の男の子だ」


 身に余る言葉だ。俺は恐縮して頭を下げた。

 アスカ先輩は、優しく、どこかさみしそうに笑って、言ってくれる。


「私は、キミに任せるよ。わからずやのヒサヒトくんに、一泡ふかせてやってよね!」


 彼女の心さみしさを受け取って、俺は明日の勝利を誓った。

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