第166話 おまえらしさ

「よく言ったぜ、青虎」


 下校時刻、校門での別れ際に、レイジが笑ってくれた。


「なんの話だ? 俺は何も言っていない」


「『俺の“手”は、俺にしかできない、栄光をつかむ手だ』!」


「……なんだ? おまえも同じセリフを言ってみたいのか?」


「いいや、まったく」


 レイジはいつものようにニヤリとさえせず、神妙に微笑んだ。


「おまえにしか、できないことだ。おまえにしか、言えないことだよ」


「光栄だな」


「勝てよシリアルキラー、おまえが信じる、おまえらしさがナンバーワンだ」


「シリアルキラーはやめろ……」


「人目があるってかあ? はははっ、今更だね!」


 レイジは微笑みを引っ込めて、高笑いながら、去っていった。

 照れ隠しか? まったく、いつでもどこでも不謹慎なやつだ……


 準決勝の敗北と、個人的な悔しさもあるだろうに、あいつはいつも笑っている。

 それもまた、強さなのだろうと思う。俺にはできないことだ。


「ありがとう、俺の、友達」


 お調子者には聞こえないように、俺はそっと、口元をほころばせた。

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