第164話 改造人間

「それっておかしくねえ? 【人体改造じんたいかいぞう】なんて魔法能力があるなら、自分の虚弱体質を、自分で治せるんじゃないのか?」


 レイジが不思議そうに首をかしげた。

 疑問はもっともで、俺もおなじことを考えていた。

 ツバメ先輩が説明してくれる。


「人体改造と言っても、手術と同じだ。メスが無ければ患部を斬ることはできない」


「そりゃ、まあ。道具が無いとな」


「ツールが無ければ、なにもできない。しかし、あいつの身体には医療用ナノマシンが投与された。人類の技術が、くしくも、あいつの魔法能力を開花させたというわけだ」


「それがレベル9の能力? ですか?」


「正しくは、その一部だな。【人体改造】を使って、ヒサヒトは自分の虚弱体質を克服こくふくした。それだけではなくて、強靭きょうじんな身体能力を……自分が望む、強い自分を手に入れた。まさに改造人間、というやつだ」


「ちょっと、ツバメくん」


「言って悪いか? 改造人間の自覚は、あいつ自身が一番あるだろうさ。そこの宮尾レイジは理想のイメージで“なりたい自分”を実現するが、あいつの場合は、自分の身体を改造して“なりたい自分”になったんだ。友人ながら、おそろしく思うよ」


 ツバメ先輩は半ば疲れているように、ためいきをついた。

 レベル8の能力者であるツバメ先輩がおそろしくさえ思う、真のレベル9。

 その真実は、正しく人外と呼ぶべきことわりの外にある魔法のようだ。


「でも、青虎くんは負けませんよ」


 人外。そうだと知って、陽花は屈託くったくなく笑った。

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