第152話 来いよ、青虎

「来い、【偽虎にせとら】」


「いくぜ、【αアルファエクスカリバー】!」


 俺は刀を、レイジは錆びた剣を呼び出した。

 戦いのはじまりに、レイジは気さくな物言いをしてくれる。


「さて、青虎、俺の能力は、わかってるか?」


「レベル9という話は聞いている。後は知らない。自己暗示か、なにかか?」


「はっはっはっ、いいねえ、ぶっつけ本番は俺も嫌いじゃないぜ。半分は正解だ」


 レイジは俺をまっすぐに見て、その“名”にふさわしく堂々と言う。


「俺は“ヒーロー”、俺は“英雄”、ゆえに、この心は不撓不屈ふとうふくつ


 ココロと戦った時と同じ、自己暗示のようなまじないだ。

 戦いを待ちわびる俺たちは、しかし、まだ、お互いに万全を期していない。


「俺の能力は、【理想模倣りそうもほう】……“なりたい自分になる能力”だ」


「おもしろそうな能力だな。漠然ばくぜんとしすぎて、よくわからないが」


「望むものに祝福を、望まないものに拒絶を、って理屈さ。早い話が、俺が効かないと思えば、刃物だろうが爆弾だろうが俺には効かない。われながらインチキみたいな魔法だな。おまえにとっては、絶体絶命ってやつだ」


 それがココロの火炎を防いだ能力の正体であるらしい。なるほど、インチキ魔法だ。

 だが、インチキ魔法を身に宿す者は屈託くったくのない物言いで笑うのだ。

 レベル9、相手にとって、不足はないさ。


「来いよ、青虎……おまえに、レベル9最強ってやつを教えてやる」


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