第149話 元気を出せ

「なによ、無能力者レベルゼロが私をはげましてくれるわけ?」


「ソレは違う。俺が勝つと言ったのは、あいつが、俺の次の対戦相手だからだ」


「きっと、最後の対戦相手よね」


「そうはならない。まだ、決勝戦が控えているからな」


 俺が答えると、ココロは少しだけおどろいた表情をする。


「勝てるつもりなの? あんたが? レベル9の能力者に?」


 俺は卑屈に沈んだ者に、答えなければならなかった。


「勝つ気力を失った者に、最初から勝利はおとずれない」


「なによそれ……根性論?」


「実体験だ。無気力でいると、よい結果はついてこないさ。それに……」


「それに?」


「キミが泣くと、陽花が悲しむ。元気を出せ、赤木ココロ。キミにはそれが必要だ」


 言ってやると、ココロは苦く笑って、「そーゆーことね」と納得してくれた。

 そうさ。キミのためではなく、キミの友達の陽花のためだ。当たり前の話だな。


 もともと、俺とココロの間には交流はない。親身に励ますのも、おかしな話だ。


「変なやつ……ま、準決勝、応援くらいはしてあげるわよ!」


 ココロはあけすけに笑って、去っていった。

 声援がもらえるなら、俺は、それに応えてみせよう。


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