第148話 俺が勝つ

「あんたの言う通りよ。上には上がいるし、私の立場は、よくて中の上の能力者」


 強気なココロには似合わない、しおらしい笑い方で、ココロが自虐をした。

 レベル7の能力者というのは、レベルゼロから見れば十分すごいんだがな。

 こればかりは天に与えられた才能だ、素直にうらやましく思う。

 その旨をココロに伝えてみると、彼女は首を横に振る。


「レベル7なんて中途半端よ。レベル8には届かないし、レベル9の足元にも及ばない。だから、私は工夫したり、技を作ったりして、がんばってきた」


 炎の衝撃波だとか、超集中の技だとか、それはココロの努力の証だ。


「でも、結局は、戦うたびに思い知らされる。私にできることは、他の誰かにもできることよ……相手も努力をしていたら、差は縮まらないし、ずっと追いつけない」


「それは努力の量ではなく、質の差だろうと思う」


「そうね。私は器用なタイプじゃないから、要領が悪かったのは認めるところよ」


 ココロは聞くに綺麗なことを、綺麗な諦め方で、言うのだ。

 ウソばかりだった。聞いているだけでも、俺の心が痛むようだ。


「でもさ。私は、これでもがんばってきたのよ」


 だとしても、俺は言わなければならなかった。


「なのに、どうして、あんな澄ましたやつに負けなくちゃならないのよ……」


 ソレは違うと、言わなければならなかった。

 ココロを励ますためではなく、レイジを擁護ようごするためではなく。

 “これから”のために、俺は言う。


「なら、俺が勝つ。卑屈になるな。キミも、元気を出せ」

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