第144話 レベル9

「私が青虎くんとココロくんを誘ったのは、選抜大会を盛り上げるためだ」


 大爆発の威力で観衆が熱狂する中、マルフジ学園長が普段と変わらない物言いをした。


「能力者の勝負は見え透いている。レベル9の生徒会長が勝って、それに迫るレベル8の生徒が上位を占める。強い者が勝ち、弱い者が負ける。それは当たり前の結果だ」


 だから、と、マルフジ学園長は付け加えた。


「青虎くん、キミのような無能力者レベルゼロが勝てば、すべての生徒が勇気を得られる。ココロくんのように、最上位には届かないレベル7が実力以上に善戦すれば、みんなが彼女を応援してくれる。私の言う盛り上がりとは、そういうことだ」


「俺たちは客寄せですか」


「悪く考えないでくれたまえ、環境の停滞はつまらない。誰しも望むところではないさ」


 爆炎がやみ、もうもうと立ち上る土煙が、ゆるやかに晴れていく。

 黒焦げ死体の確認に向かおうにも、爆心地には余熱で近づくことさえできない。


「とはいえ、多くの人間が、圧倒的な強さに惹かれるのもまた事実だ。最高位の能力者には、学園長である私でさえも、心躍る気持ちがするよ」


「学園長もですか?」


「私は見たかったのさ。最弱レベルゼロ最強レベル9に挑む舞台を。そうでないならば……最強の存在に、同じく最強の存在をぶつけてみたかった」


 土煙が晴れた。

 学園長がゆかいに笑っている。

 “最強”、その名前が上辺だけのハリボテでないならば……


「宮尾レイジ、彼はレベル9の能力者だ」

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