第143話 魔王の紅蓮と錆びた聖剣

「は、はあ? エクスカリバー? それがあんたの剣の名前なの?」


 ココロがあきれるように言った。

 戦いに際して、相手を侮る気持ちはないのだろうが、言いたくなる気持ちはわかる。


 かの異国の王様の伝説から由来を取ったであろう、聖なる剣の名前だ。

 まかり間違っても、ボロボロに錆びた剣が名乗ってよい名前ではない。


 レイジは答えなかった。

 彼は自分から攻めるのではなく、手持ちぶさたに立っている。

 はためには尊大や自然体とさえ映らない、“当たり前”のような振る舞いだ。


 俺には聞こえなかったが、レイジがココロに向かって何かを口にしたようだ。

 戦う者だけに伝わる挑発だろうか? 


 ココロのまなじりが、キリリとつり上がる。


「そんなに丸焼きになりたいなら、本気で相手をしてあげるわ。私、ミーハーな男って、基本好きじゃないのよね」


 超集中ゾーン状態……熱量操作によって、ココロの周りに冷気がただよった。

 本気の言葉通りに、ココロは自らのメンタルを律して、万全の体勢だ。

 冷たい雰囲気とは反対の超熱量で、圧倒的な紅蓮が燃ゆる。

 魔王剣が生み出す炎に対して、人間の存在はあまりにもちっぽけに見える。


「消し飛べ!!!!」


 爆炎の衝撃波が放たれた!

 紅蓮の炎はまっすぐに、レイジへと向かい――


 直撃! まともなガードさえ許さず、大爆発が巻き起こった!


「ほら、審判先生。試合終了の宣言をしてよね」


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