第142話 はじまりのアルファ

 特に拒む理由もなく、俺は、マルフジ学園長と同席した。


 みなが試合に注目している中、マルフジ学園長は世間話をする。


「緊張しているかい? 宮尾レイジくん、赤木ココロくん、どちらもキミの友人だ。この試合に勝った方が、キミの準決勝の対戦相手になる」


「そうですね。どちらが勝ちあがって来ても、俺は俺のできることをしますよ」


「おや、キミはまさか、レイジくんに勝ち目があると思っているのか? レベル7、学園屈指の能力者であるココロくんを相手に、なにか奇跡があると?」


「奇跡は無いと思いますが、勝負はやってみなければわかりませんから」


「違いない。キミは少し変わったな。なにやら、ふところが深くなった」


 審判役の教師が試合開始の宣言をした。


 ココロが魔王剣ロードブレイザーを抜剣し、レイジが錆びた剣を呼ぶ。


 紅蓮に燃ゆる超高温の炎をまとった、ココロの魔王剣。

 それに比べて、レイジが呼んだ錆びた剣の、なんと頼りないことか。


 誰もが消化試合を気楽な気持ちで見守っている。

 俺も、マルフジ学園長も、特別な感慨はない。

 しかし魔王と戦う者は、はじまりに、まじないを口ずさむように言う。


「俺はヒーロー、俺は英雄、ゆえに、この心は不撓不屈ふとうふくつ


 自己暗示か? 俺は首をかしげた。

 その時に、学園長が少しだけ、口元に笑みを浮かべる。


「いくぜ聖剣、【αアルファエクスカリバー】」

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