第133話 強くありたい

 レイジはメンタルの修行だと言った。

 キナコおばあさんは、お悩み相談くらいの気分で話を聞いてくれる。

 人に悩みを打ち明けるのも、精神の安定には必要なことかもしれないな。

 俺は少し考えてから、正直に、胸の内の悩みを伝えることにした。


「友達を、傷つけてしまったんです」


「あらあら、喧嘩?」


「いえ、俺がふがいないせいで……友達を怒らせてしまったんです」


 俺は陽花の名前を伏せて、先日の校内選抜大会の出来事を説明した。

 陽花は最後には俺を許してくれたのかもしれないが、あの一件以来、すこしだけ態度がよそよそしくなった。

 陽花の学校生活に問題が起きたわけではないようなので、一安心ではある。

 そこでレイジに相談してみたところ、「おまえが頼りないからだろ」と怒られた。

 そのままメンタル修行だと言われて、田舎町に連れてこられたという話だ。


「俺は頼りないやつなんでしょうか」


「うーん、私は、そうは思わないけどねえ。レイジちゃんよりもしっかりしていそう」


「ひ、ひいばあちゃん! そりゃないぜ!」


 流れ弾をくらったレイジが悲しそうにした。


「俺は、強くありたいんです。もう二度と、彼女を傷つけずに、いられるように」


「あらまあ素敵ねえ……だけど」


 キナコおばあさんは、微笑みながら、困った顔をした。


「強くあるって、なあに?」

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