第125話 あの子の、泣き顔

「ん? いいやあ別に? 俺はこういうアホみたいな集いって好きだからさ! 田舎の中学校時代を思い出して、交ざりたくなったんだ! 早飯だろ? みんなで行こうぜ!」


 上級生の手前だというのに、いつも通りの軽薄なノリで、レイジが笑った。

 学園の派閥の上級生たちも、「めんどくさそうなやつが来たな……」と半笑っていた。


「俺にもおごってくれよ、先輩! 食べ放題に行こうぜ!」


「はははっ、いいとも、今日の俺たちは機嫌がいいんだ。少し待ってくれたら、焼肉に連れて行ってやる。もちろん、おごりでな!」


「へえ、安い肉の、食べ放題かね? まあ、いいや、昼時には魅力的だ」


 レイジが生意気にせせら笑う。

 学生のサイフ事情だ。

 安い肉とは正しいのだろうが、言われた上級生はおもしろくなさそうにしている。

 レイジの言う通り、くだらない人間の、くだらない集いだ。

 それこそ、田舎のヤンキー中学生の方が、いくらか元気で健全かもしれない。

 無意味に、無気力に……今の俺は人生の活力さえ失っている。

 レイジは俺を見下げてさえくれない。ツバメ先輩は悲しそうにしていた。

 アスカ先輩も、きっと、今の俺には納得してくれないだろう。

 月花には、鼻で笑われるかな。

 陽花は……どんな顔で、今の俺を見てくれるのだろうか……


 ほんの短い間の、楽しかった時間と思い出が、走馬灯のように、ながれてゆく。

 楽しい時間、あの笑顔を、俺は裏切って……


「ちっ、つまらねえ。おい青虎新入生! おまえも、黙ってないでなんとか言え!」


 はじめて会った入学式と同じ、陽花の泣き顔を思い出した時。

 俺は、【偽虎にせとら】のつかで、上級生のあごを打ち砕いていた。

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