第123話 風紀委員長に相談しておく

「――という事情がありまして、お力をお借りしたく」


 上級生に脅された日の放課後、俺は風紀委員会にやってきていた。

 困ったときはいつでも相談に来いと言われていたので、その縁を頼ってだ。

 俺の説明を聞いたツバメ先輩はむずかしい表情をしている。


「……青虎、つまりおまえは、風紀委員のツテで、鶴山陽花つるやまようかを守ってほしい、と頼みに来たわけだな?」


「ええ、俺が選抜大会で負けたとしても、彼女に危害が及ばない保証はありませんから」


「たわけ! おまえが守ってやればいい。おまえが持つ刀は飾りか!」


「実力行使だけでは、どうにもならない世界があると思いますが……」


「話が逆だ。実力行使で勝てないという事実を見せつけなければ、いつまでも弱みにつけこまれるぞ。おまえだけではない、鶴山陽花の学園生活にも、のちのちまで影を落とす」


 ツバメ先輩が怒るように言った。自衛の観点では、まったくその通りだと俺も思う。

 とはいえ、この場合は見過ごせないリスクがある。

 俺が第三回戦を勝ち抜いたとして、俺は無事でも、陽花に学園の派閥の嫌がらせがシフトするという、好ましくない可能性だ。

 その旨を伝えて、俺はツバメ先輩に頭を下げる。


「だから、負けた俺の代わりに、陽花を守ってやってほしいんです」


「おまえ……」


 ツバメ先輩はつらそうに口を結んだ。

 学園の風紀を預かる者として、無力を噛み締めているのかもしれない。

 他人の卑劣に苦しんでいるのは俺だけではない、今は、ツバメ先輩も同じなのだ。


 ツバメ先輩は最後にはうなずいてくれた。「すまない」と悲痛な謝罪を添えて。

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