第122話 言い訳

 なるほどな、と俺は納得した。


 俺に勝てないから……というと自意識過剰のようだが、俺が予想以上にねばるものだから、外堀を埋めて選抜大会をリタイアさせようという作戦なのだろう。


 俺をリタイアさせるための人質として、気弱な陽花に白羽の矢が立った。

 学園の派閥とは言葉通りに、生徒の集団が形成するグループだ。


 男もいれば、女もいる。女性生徒の交友関係にも手が出せるに違いない。

 俺は男だから、女性の交友関係がどんなものなのかは、うまく想像できないが……


 印象としては、男性よりも雰囲気のコミュニケーションを重視して、お互いの立場の有利不利を気にかけているように思う。


 こればかりは男も女も同じだが、はしご外しのような、根の暗い話もあるんだろうな。

 小学校でいじめっ子をやっていた女の子が、中学校では反対にいじめられて不登校になった話を実例として知っている俺にしてみれば、あまり楽観できる話ではない。


 まして、陽花が当事者になると脅されてしまえば、迷いが生まれる。

 陽花は、おそらく自力で他人の悪意をはねのけることができないだろう。

 ココロのような気のいい友人が、離れていくことはないのだろうが……

 レイジやアスカ先輩が、手のひらを返すこともありえないのだろうが……


 学校の日常で、仲間外れにされて不自由をすれば、陽花はきっと悲しむだろう。

 涙を見せることはしないかもしれないが、それも強がりだとわかり切っている。


 言うだけ言った上級生が機嫌良さそうに去っていく。

 俺の答えは最初から決まっていた。

 ようやく、俺も自分の人生に、活力を見つけられたと思っていたんだが……


「残念なことだ」


 俺は、第三回戦を棄権するすっぽかすことに決めた。

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