わたしを重荷にしないで

第121話 仕方がない

「派手にやってくれたじゃないか、新入生」


 あくる日、俺は登校途中、上級生の集団に呼び止められた。


 特に用のない相手だが、一応、年上の顔を立てて、話を聞いておく。


「まさか風紀委員長を倒すとはな。おめでとう」


「だが、さんざんと派閥の勢力をコケにして、ただで済むとは思っていないだろう」


「……はあ、と言うと?」


「勘違いをするな、俺たちはおまえに危害を加えようと思ってはいない」


「命拾いしたな。夜神青虎やがみあおとら


 だろうと思うさ。命拾いとは聞き飽きたセリフだ。

 中堅程度の能力者なら、首を斬れば無力化できるからな。


 俺のやり方を見た後で、誰も俺と喧嘩をしたいとは思えないのだろう。

 ならば口喧嘩おしゃべりがしたいのか? と俺は首をかしげる。


 しかし、俺の悠長ゆうちょうな想像は、上級生のひとことで否定される。


「おまえにはお友達がいるそうじゃないか、鶴山陽花つるやまようかだったかな」


陽花彼女になにか?」


「おっと早合点をするなよ! 俺たちはなにもしない、なにをする気も、今はない!」


 『今は』、という言葉が、俺に暗黙の了解を強要していた。


「わかるな? 第三回戦で負けろ。でなければ、悲しい思いをする生徒が生まれる」

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