第118話 熱狂

「勝者、夜神青虎やがみあおとらくん」


 しんと静まり返った試合会場で、審判役の教師が告げた。


 首を斬って決着という、血の雨が降る終わり方である。


 俺らしいと言えば俺らしいが……

 このドン引きムードには、なんど立ち会っても慣れないな。


 と、思っていると――


「すげえ! あいつ、風紀委員長に勝ちやがった!」


無能力者レベル0が、レベル8に!? 冗談だろ!?」


「合宿とは違う、今度は能力勝負だ。あの野郎、本当に勝ったんだ!」


 学園の派閥に属さない新入生、あるいは派閥に属さない上級生も、だろうか。


 彼らは口々に湧き、勝者への称賛をあめあられと口にしてくれた。


 どうして、こんな手のひら返しが行われたのか?

 俺は意味が分からず、考えをめぐらせたが、その点は結局よくわからなかった。


 ただ、昨日の陽花の言葉を、ひとつだけ、思い出す。


「青虎くんを見ていると、勇気が出るんです」


 ひょっとしたら、集団の同調圧力に縛られていた彼らも、なにか、勇気が出るようなきっかけがあったのかもしれない。あくまで、ひょっとしたら、だが……


 後片付けが忙しそうな教師陣に背を向けて、俺はクラスの輪に戻った。

 誰も歓迎してくれないが、今日だけは、それもいいと思えた。

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