第117話 鎖鎌を斬る

「おもしろい! やってみろ! シリアルキラー!」


「……その呼ばれ方も、久しぶりですね」


 久々のシリアルキラー扱いを、俺はゆかいに思い、地を蹴って駆けだした。

 視覚を狂わされている状況では、正確な距離と方向はつかめない。

 だが、少なくとも、音がする方向を目指して走れば、まるっきり見当違いに向かってしまう失敗は避けられるだろう。


 問題は……まっすぐに飛んでくる、即死級の鎖分銅飛び道具だ。


「来るか! だが!」


 いくら聴覚を使ってズレを調整しても、視覚を狂わされた状態で、ごくごく至近距離の投げつけを避ける手段は、ほぼ無い。


 当たれば試合終了だ。しかし、それはツバメ先輩の側にも同じ話が言える。

 仮に鎖分銅を外してしまった場合、かまと刀の近距離戦にもつれこめば、どう考えても刀を持つ俺の方に軍配が上がる。


 リーチの差もあるし、刃が内側についている鎌は本来、戦闘向きではないのだ。

 ゆえに、この一瞬、この交差が俺たちの勝敗を分ける。


「いくぞ【偽虎にせとら】、あの首をもらう!」


「っ、やらせるか!」


 投げ放たれたか? だが、まだ音は聞こえない

 風をきる音が遅れて聞こえた、その瞬間に――


「俺の、勝ちだ」


 俺は、鎖鎌の刃ごと、ツバメ先輩の首を、はね飛ばした。

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