第113話 鎖を斬る

 鎖分銅の……手元を離れた飛び道具の動きは限りなく直線だ。


 弧を描き振り回すという選択肢もあるだろうが、ツバメ先輩はそれをしていない。


 ならば、俺の側に反撃の手段はある。


 鎖分銅を避けて、鎌と鎖分銅をつなぐもの、すなわち鎖をてばよいのだ。


 ツバメ先輩の狙いはたくみだが、鎖分銅の攻撃それ自体は直線的で単調だ。


 決して避けられない速度ではない。やれるはずだと、俺は自分の判断を信じた。


 ……とはいえ、リスクもある。


 鎖を断つ作戦に失敗した場合、刀を鎖に絡めとられてしまうかもしれない。

 そうなれば、武器を奪われて、丸腰になった俺の負けだ。


 その時は仕方がない。潔く降参させてもらうさ。


 ザッ、と、俺は走り回るのをやめて、立ち止まることでツバメ先輩の攻撃を誘う。


 ツバメ先輩はわずかにいぶかしげにしたが……しかし俺の誘いに乗って、鎖分銅を投げつけてくれた。


 絶好の交差だ。この機会を逃す手はない。


 俺は最小限の動作で鎖分銅を避けようとした……したの、だが。


「っ!?」


 背筋にえもしれぬ悪寒が走った。その直感を信じて俺が大きく身をかわした瞬間。


 頭蓋骨を砕く勢いで、鎖分銅が、俺の“目の前”を通過した!

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