第112話 黒玄武

「来い、【偽虎にせとら


 俺はみずからが持ちうる魔法能力の刀を呼んだ。


 いつも通りだ。この刃が、俺の持つ、たったひとつの武器だ。


「いでよ、【黒玄武くろげんぶ


 ツバメ先輩が呼んだのは、アスカ先輩の事前情報通りに、鎖鎌くさりがまだ。


 重たい鎖分銅くさりぶんどうをヒュンヒュンと回転させている。


 玄武……という名前が言葉通りであるならば、守りを重視した戦いが期待される。


 鎖分銅飛び道具によるリーチの差と、相手の守りを崩せるか、否か。

 そこに勝敗を分ける条件がありそうだ。


「さあ、いくぞ、青虎」


 ツバメ先輩が駆け出した。フットワークだ。

 出遅れないように、俺も同じ方向に向かって駆けだす。


 俺たちは並行に駆ける。相対距離は縮まっていない。


 そこでひとつ――鎖分銅飛び道具の一撃がとびこんできた!


「っ!」


 未来位置を狙った一撃に対して、俺は地を削って踏みとどまることで避けた。


 重たい鎖分銅が直撃すれば、人間の骨など、簡単にへし折られる。


 本能が威力を察して、嫌な汗が流れる。だが……俺も、無策ではない。

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