第100話 ところで

「お姉ちゃん、うれしそう」


 姉の成長を、陽花が我が事のようによろこんで、笑っていた。


 好きな異性と手をつなぐ、か。

 小学生どころか、幼稚園児のようなお悩みだが、それもよかろう。


 誰しも成長するにつれて、子どもではいられなくなるものだ。

 時には童心にかえって、自分に素直になる努力も必要なのだろう。


「うらやましいな。望まれる手、自分の手を、認めてもらえるのは」


「そ、それなら、青虎くんは、わたしと手をつなげば……」


「ん?」


「なんでもありません! 今のなしです! 聞かなかったことにしてください!」


 何事かを言いかけた陽花だが、すぐに訂正して、あわてて話を進める。


「えーと、そうだ! そういえば結局、アスカ先輩が好きな人って誰なんですか?」


「幼馴染のヒサヒトくん。ふふっ、秘密だよ? 陽花ちゃん?」


 キャーっ! と陽花が盛り上がっていた。俺にはわからない世界だ。


「燃えたぜ、燃え尽きたぜ、真っ白に、な……」


 推しの本命好きな人を知ってしまったレイジが血涙を流していた。


「生徒会長!!!! あの野郎だけは、俺が!!!! 倒すッ!!!!」


 こちらもこちらで、わからん世界だと、俺は思った。

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