第98話 その女は誰!?

「誰!? だれなの!? そいつは!?」


「こちらにおわすアスカ先輩じゃああああああああああ! 俺はアスカ先輩一筋でね! 他の女になど、目もくれぬわ! して参る! わが生涯に、悔いなし!」


 千年の恋も冷める、アイドル崇拝すうはいである。

 あんのじょう、月花が金魚みたいに口をパクパクさせていた。


 あんまりと言えば、あんまりな好意の断り方だろう。

 笑い話のようだが、俺が月花なら、一生モノのトラウマだろうな。


 そこで見かねたアスカ先輩が、神妙な表情で割って入る。


「レイジくん」バシィッ! バシィッ! バシィッ! 三連続コンボだ。


「あ、アスカ先輩……?」


「私は悲しく思います。いくらなんでも、それは無い! その振り方は無いよ!」


 おっしゃるとおり……と俺は思っていたのだが、アスカ先輩は斜め上に話を進める。


「照れ隠しで私の名前を使うなんて、見損なった! 月花さんにゾッコンな自分を、おとなしく認めなさい! それができるまで――」


 できるまで?


「絶交だよ! レイジくんは、将棋同好会のしきいをまたぐことを禁じます!」


「ガーン!!!!!!!!!」口で、ガーンって言うやつ、初めて見たな……


 真っ白に燃え尽きて崩れ去ったレイジを見捨てて、アスカ先輩は月花を見た。


「月花さん、あなたも、自分にウソをつかないで」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る