第97話 俺、好きな人がいるんだ

「なんで、余計なオマケが付いてくるのかしら?」


 人が行き交う校門で、他校の制服姿をした月花が待っていた。

 余計なオマケとは、俺と陽花とアスカ先輩を指しているのだろう。

 氷のように冷ややかなジト目を俺たちに向けながら……


「あ、レイジくん、こんにちは、偶然ね……」


 レイジを見るや否や、ほおをあからめて、照れ照れとはにかむ。

「こんな乙女なお姉ちゃん、初めて見ました!」とは、陽花の言葉だ。


 ストーカー被害の当事者であるレイジは、ひきつった表情をしている。

 気持ちは分からないでもない。確かに、これは少し怖いな。


「ねえ、よかったら、これからどこか遊びに行かない? いっしょに食事でも……」


「いや、申し訳ないが、俺は宿題をしたいから、早めに帰らせてもらうぜ」


 月花に主導権を握らせず、速攻で会話を切り上げる。


 冷たいようだが、期待させても可哀想だ。有情と言える。


「あ、あの、私、レイジくんと話がしたいの」


「そうかい、俺には何の用もないけどな」


「待って! 私のこと嫌い? 嫌いなら、嫌いなところ、直していくから……」


「お姉さんのことは嫌いじゃねえよ。だけど……ひとつだけ言っておく」


 食い下がる月花に、レイジは毅然きぜんと告げるのだ。


「俺には、心に決めた人がいるんだ」キラーン。


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