第96話 誰かが手を取ってくれるなら

「青虎くん?」


「俺には月花の気持ちはわからない。だけど、俺自身の感想は言える」


 俺はずっと、望み通りにならない自分の“手”に負けて生きてきた。


 それを不幸だと考えることもできたし、呪うこともできた。

 実際、幸福と不幸を天秤にかけたときに、俺は自分の人生を不公平だと思っている。


 もちろん、自分よりも不幸な他人がいることは承知の上だ。

 それでもやはり、人間は自分の不幸を呪わずにはいられないのだろう。


 だから、その“不幸”、自分の手を取って、認めてくれる誰かが、いたならば……


「うれしいと思うよ。俺には、月花の本心はわからないが」


「青虎……」


「逃げずに、月花と話してやってほしい。頼むよ、レイジ」


 俺が言うと、アスカ先輩がニコリとわらってくれた。


 レイジも腹をくくったようで、フッと息をつく。


友人ダチにそこまで言われて、逃げるようでは、男じゃねーなー」


「話は決まったな?」


「ああ、わかったよ。陽花ちゃんの姉貴には悪いが……」


 元気印のレイジが不敵に高笑った。


「この勝負、こっぴどく、フラせてもらうぜ!」


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