第95話 望まれない手

「はあ、手をつなぐ? どういうことだ? そりゃ?」


 レイジは訳が分からないと言いたげに、陽花に問い返した


「お姉ちゃんが魅了魔法チャームをもっているのは、知っていますか?」


「ああ、それは知ってるぜ」


「お姉ちゃんの能力って、半ば強制的で、歯止めがきかないんです。だから手をつないだ相手は、誰でもお姉ちゃんの言いなりになるんですけど……」


「なるほど、あの魅了魔法は、本人にも発動が制御できない能力なんだな?」


「そうなんです、解除はできるみたいなんですけどね。だから、というか……」


 陽花が少し考えて、レイジの手を見た。


「この前、廃遊園地でレイジくんがお姉ちゃんを助け起こした時、手をとりましたよね?」


「ん? まあ、そりゃそうだな」


「ソレです。だけど、レイジくんには魅了魔法が効いていない。自分の能力が通用しなくて、はじめて、ふつうに手を取ってもらえて、お姉ちゃん、うれしかったんだと思います」


「だからストーカーになったって? うーむ、わからん世界だ……」


「あくまで、わたしの想像ですけどね」


 陽花も、姉の気持ちに確信はないようだ。

 しかし俺には少しだけ、月花の気持ちがわかるような気がした。

 誰にも望まれない手、望みもしない自分の手を取ってくれる誰かがいたならば……


「そうだな、うれしかったんだと、俺も思うよ」

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