第94話 男の度量を見せろ

 目が覚めるようなビンタをかまして、アスカ先輩が言う。


「男の子の度量が! 試されているよ!」


「あ、アスカ先輩、あなたはやはり正道をゆく女神でございます……」


 じーんと、レイジが感銘かんめいを受けたように、うるうると涙目をしていた。

 なぜ、アスカ先輩がレイジを殴ったのかはわからないのだが……


 しかし、それでもやはり、気が進まなさそうに、レイジが困った顔をする。


「……でも、ぶっちゃけなんで俺に付きまとうんだろ? 男なんて他にもいるだろ?」


「おまえが月花を可愛くて好きだと言ったからじゃないのか?」


「そ ん な ! ま さ か ! 小学生でもあるめーし!」


 レイジがゲラゲラと品なく笑った。


「レイジくん!」バシィッ! と、またアスカ先輩が殴った。


「痛ッ!?」


「人の好意を笑うなんて、人間として、最低だよ!」


 レイジがまた、感銘を受けたようにうるうると涙目をしていた。痛いんだろうな……

 しかし、なぜアスカ先輩がレイジを殴るのか、それはやはりわからない。ノリか?


「お姉ちゃん、ひょっとしたら……」


 そのとき、真剣に考え事をしていた陽花が、ふと口を開いた。


「手をつないでもらえたのが、うれしかったんじゃないでしょうか?」

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