第93話 レイジくん!(バシィッ!)

「アスカ先輩! 今日もお美しゅうございます!」


 ブレないレイジが、こんな時でもお世辞を口にした。

 アスカ先輩は華麗にスルーして、話を進める。


「レイジくん、私は悲しく思います」


「へ? な、なにがでございましょうか?」


「女の子の好意を! まっすぐに受け止められず! あまつさえ邪険に扱う! その心はいかに! 男の子の度量が、試されているよ! レイジくん!」


 ズバーン! と人差し指でレイジを指さして、アスカ先輩が言い切った。

 レイジはスガーン! とショックを受けて、困り顔をしている。

 まあ、困る話だろう。少なくとも意中の人に言われてうれしい言葉ではない。


「レイジくんは、そんなに臆病な男の子だったの? 違うよね?」


「あ、アスカ先輩がおっしゃるなら、俺は……俺は……」


「とりあえず、逃げずに会って、話をしてみたらどうかな? 私は、それがお互いのためだと思うんだけど」


「ああ、それは、俺もそう思います」


 結論としては、俺とアスカ先輩の意見が一致したようだ。

 しかし、レイジは気が進まなそうにうじうじしている。


「うーん、でもなあ……見るからにめんどくさそうな女だし……」


「レイジくんッ!」バシィッ!


 レイジが引っぱたかれた。


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