第92話 お姉ちゃんが迷惑をおかけしまして……

 将棋同好会は、レイジのストーカー被害の対策会議室になっていた。


「重ね重ね、お姉ちゃんが迷惑をおかけしまして……」


「いや、陽花は悪くない。レイジが騒いでいるだけだ」


「青虎ッ! てめえッ! 他人事だと思いやがってッ!」


 レイジが怒り心頭でキレた。

 言われても、実際、他人事だから、どう答えることもできない。

 レイジはわなわなと震えて言う。


「おまえにわかるか!? 朝起きたら、道端から部屋の窓を覗かれていた恐怖が!?」


「それはふつうに怖いな……ストーカーだな……」


「目が合ったら、笑顔でニコッってされるんだぞ……恐怖だろ……」


 レイジがガクガクと、寒気で震えていた。

 そこまで怖がることか? とも思ったが、愛憎は裏返しともいうし、好意からくる行動だとしても、手放しによろこべる話ではないのだろう。


「やべえ女だよ。あんなめんどくさそうな女、俺は生まれて初めて見たぞ……」


「う、うう、お姉ちゃんが、ご迷惑をおかけしまして……」


 犯人の妹の陽花は、肩身がせまそうにちぢこまっている。

 俺としてもうまく助けてやりたいところだが……どうしたものかな。

 やはりここは、当事者同士の話し合いと歩み寄りが必要だと、俺が考えたところで……


「話は! 聞かせてもらったよ!」


 アスカ先輩があらわれた。


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