片思いのお手伝い

第91話 レイジに春が来た

「助けてくれ、青虎!」


 能力者の校内選抜大会が近づいたある日。

 将棋同好会の扉を開けて、レイジが駆けこんできた。


「急にどうした?」


「みょうな女に付きまとわれている! 助けてくれ!」


「みょうな女?」


「登校中に話しかけてきやがるんだ、よその高校だっつーのに……めんどくせえ……」


「それはおまえに春が来たという話か?」


「んなわけがあるかあ! 俺はアスカ先輩一筋だっつーの!」


 レイジがめずらしく本気で怒った。

 どうやらウソ偽りなく、本当に困っているらしい。


 これが女性の立場ならストーカー被害のようだが、男の立場で女性のストーカーを気に病むというのは、贅沢ぜいたくな悩みだな。俺はそう思う。


「くそっ、さっきも校門で待ち構えてやがった。あぶねえ……」


 だから帰らず、将棋同好会に逃げ込んできた、という話らしい。

 しかしレイジに付きまとうストーカーというのも、わからない話だ。


「具体的には、誰だ? 知り合いか?」


「陽花ちゃんの、姉貴だ!」


 身から出たさびだな、と俺はすなおな気持ちで思った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る