第84話 枯れた花の城

 花のお城、というからには花々に彩られたお城なのだろうか。


 それは西洋的なレンガのお城だった。

 ただし、手入れのされていない花は枯れて、代わりに雑草がおいしげっている。


 見るも無残とはこのことだろう。俺は少し悲しい気持ちになる。

 お城には門があって、門には門番が立っている。

 さながら、廃墟のお城を守る、亡霊の兵士だ。


 大きな鉄のハンマーを手に持つ、大きな身体と鎧の兵士……

 手に持つハンマーは、能力者の武器かな? 鎧はコスプレだろうか?


「女王様の命により、この先には、何者も通さない」


「なるほど、廃墟の女王か。気取り屋には似合っているな」


 このゾンビのような操り人形の男たちは、月花の能力によるものなのだろう。

 月花の悪趣味にあきれる俺は、刀を構え直した。


「いざ尋常じんじょうに――」


「勝負といきたいところだが、俺は急いでいるんだ」


 俺は刀を、【偽虎にせとら】を投げつけた。

 不意をうった攻撃を、門番はとっさに打ち払う。刀がクルクルと宙を舞った。


 そのとき、俺はすでに駆け出していた。

 地をってジャンプし、弾かれた刀を空中でつかみ取る。


 勢いに任せて、門番の兜に、刀を力いっぱい叩きつける。

 激突! まさしく、これが鈍器の使い方だ。


 門番はその巨体と鎧の重量で、地を揺らして、倒れた。


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