第80話 迷子か?

「えー? 陽花ちゃんとはぐれちゃったのー?」


 アスカ先輩が、あきれていた。


「ソレはダメだよ、青虎くん。男の子がちゃんとエスコートしないと」


「めんぼくありません」


「紳士失格だよ! そんな体たらくじゃ、陽花ちゃんはお嫁にあげられません!」


 冗談めかせた物言いとは裏腹に、アスカ先輩は本気で怒っているようだ。

 急ぎスマホで連絡を取ってもらったが、陽花からの反応はない。


「メッセージが既読にならない……スマホ、バッテリー切れかな?」


「困りましたね」


「手分けして探そうか?」


「いえ、先輩は帰ってください。俺が探します。陽花も先に帰ったのかもしれませんし」


「うーん、そうだね、高校生になって、迷子もないよね? おっけー!」


 アスカ先輩は「また学校でね!」と明るく言って去っていった。

 さて、残された俺は、はぐれた陽花を探さなければならない。


 どうしたものかな、と思っていると……


「ごきげんよう、青虎くん」


 声がかかった。


 陽花と同じ服装で、“同じ顔をした”誰かが、そこにいた。

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