第79話 不安

「いやあ、楽しい時間だったッス」


「ほんとほんと、大漁だったね! 稲荷くん!」


 ゲーセンデートを楽しんだ稲荷先輩とアスカ先輩が戻ってきた。


 両手いっぱいにぬいぐるみを抱えているのは、クレーンゲームの戦利品だろう。


 アスカ先輩は「これ、取ってもらったんだ―」と笑顔でご満悦だ。


「どうだった? 青虎くんと陽花ちゃんも楽しめたかな?」


 俺たちはレースゲームで大盛り上がりだった。


 その旨をふたりに伝えると、どちらの先輩もゆかいに笑ってくれた。


 そろそろお昼時かな。

 お腹が空いてきたころに、アスカ先輩が提案する。


「どうする? みんなでお昼を食べに行く?」


「いや、さすがに景品を取りすぎたッス。今日はひとまずお開きにして、荷物を持ち帰るのがいいかなと思うッスよ」


「それもそうだね。んじゃ、各自、自由時間ということで!」


「アスカさん、今日は楽しかったッス! 青虎くんと陽花ちゃんも、楽しい時間をありがとうッスよ!」


 そう言って、稲荷先輩は去っていった。良い人だな、とつくづく思う。

 稲荷先輩を話題にして、陽花と話をしよう、と思っていたのだが……


 ふと気づくと、陽花が、いなくなっていた。

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