第78話 負けたわ!

「くっそー、負けたわ! 悔しい悔しい悔しい悔しい~っ!」


 ココロが駄々っ子のように地団太じたんだを踏んでいた。


 周りのお客さんの迷惑になるからやめてくれ……


「ココロちゃんも強かったよ」


「むう、勝者の余裕ね……さすがは陽花、私の強敵ともよ! だけど、能力者の校内選抜大会では、こうはいかないと憶えておきなさい!」


 負け犬の遠吠えにふさわしい言い方で、ココロが高笑った。


 どうにも彼女は、意味もなく勝ち誇るのが悪癖だな。


「それじゃーねー」と手を振って、ココロが去っていく。

「またねー」と、手を振り返す陽花の笑顔が、実にすがすがしい。


 俺がおもしろく思っていると、陽花が申し訳なさそうに言う。


「すみません青虎くん、騒がしくしてしまって」


「いいさ。俺は楽しかったよ」


 レースゲームの実況なんて、できることじゃないからな。


「でも、せっかくのデートなのに……」


「デート?」


「あ、い、今のは無し! 無しです! 忘れてください!」


 赤面して否定する陽花を、ちょっと可愛いと思ってしまったのは……秘密だ。

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