第76話 追う者、追われる者

「ココロちゃん!? まさか、自分の能力を使って!?」


 これには俺もおどろいた。


 ココロは単純というか、猪突猛進な性格だと思っていたから、その弱点を補うような技を持っていたのは、素直に感心する。彼女は意外と努力家なのかもしれないな。


 ゲーセンのレースでレベル7の能力を使うのがフェアプレイかどうかはさておくとして、予想もしない特殊能力の使用に、ギャラリーは大盛り上がりだ。


 氷のようにクールな……と評価してさしつかえない、圧倒的な集中力を発揮したココロは、コーナリングで突き放されていた差を互角に詰め返す。


「フッ、どんなもんよ?」


「やるね、ココロちゃん、だけどコーナーの優位はわたしにある!」


 ドライバーの集中力とテクニックは互角か。

 だが、選択したマシンの差で、コーナーの安定は陽花に軍配があがる。


 的確なブロッキングで、陽花は前をゆずらない。

 されど、最高速と直線の優位がココロのマシンにあるのも、また事実。


 ついにココロが、ロングストレートでリードを奪い返す!


 追う者、追われる者が逆転した瞬間に、ギャラリーは熱狂した。


「コーナーの読みが鋭くても、前を行かれたら、どうしようもないでしょ!」


 先を行くココロが勝ち誇った。

 陽花はなにも言わず、差を広げられないよう、ココロのスリップストリームにつける。


 運命の最終コーナーで、陽花はアクセルを踏み込んだ!

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