第75話 名づけて、ココロの領域

 ココロは最高速度重視のマシンを選ぶ。


 対する陽花はコーナリングの安定を重視してマシンを選択した。


 必然的に、サーキット序盤の直線ではココロがリードを奪うのだが……


 ギャンッッ! そこはサーキットのアマデウスだ。

 数限りないコーナーを最速で駆け抜けることで、一瞬で差を詰め返す。


 直線が少なくないコースで、前を行くのはドライバーの腕前だろう。


「陽花!? あ、あんた、このコーナーを4速で行くの!?」


「そういうこと!」


 光速のコーナリングと呼ぶべきか。


 陽花の圧倒的な技術にギャラリーが熱狂する。


「お先に失礼! ココロちゃん!」


「ぐ、ぐぬぬ……いいわよ、私も本気を出すわ!」


 深呼吸。

 俺は見た。その瞬間に、ココロの顔から表情が消える。


「熱量操作。頭を冷やせクールダウンだ、私」


 炎をあやつるココロの能力、すなわち熱量をあやつる能力だ。

 ココロは自らの能力を使って、文字通りに自分の頭を冷やす。

 極限の集中力、ゾーン状態を意図的に作り出す絶技なのだと、俺は気づく。


「いくわよ! 私の新技! 名づけて、【ココロの領域】!」

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