第74話 ココロちゃん、勝負しましょ?

「あんたら、なにやってんのよ……」


 俺たちがレースゲームを楽しんでいると、知った声が聞こえてきた。


 赤木あかぎココロだ。

 ショッピングを楽しんで、その足でゲームセンターに遊びに来たらしい。


「俺たちは先輩と遊びに来たんだ。キミも遊んでいくか?」


「私は遠慮しとくわ。にしても、陽花にこんな特技があったとはねえ……」


 コースレコードを叩きだした陽花のプレイ画面を見て、ココロが感心していた。

 こればかりは俺も同感だ。


 陽花をあなどるわけではないが、彼女は意外と趣味が幅広い。

 褒められてうれしいのか、陽花がニコニコして、ココロをゲームに誘う。


「ココロちゃんも遊ぼうよ。おもしろいよ? レースゲーム?」


「いや、私は……」


「あ、自信ないんだ? 仕方ないね~、ならやめておこうね~」


「はあ!? なんですってえ!?」


 あおられたココロは、釣り堀の魚がエサに食いつく勢いで吠えた。

 落ち着け……と俺は思ったが、本人はすっかり勝負する気になっている。


 チャリンと硬貨を投入する。挑戦者の登場に、ギャラリーが盛り上がる。


「フッ、後悔させてあげる。こう見えてもゲーマーなのよ、私は!」


 勝負の前に大口を叩くのは、負け犬の常とう句だと、俺は思った……

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