第69話 嘘から出たまこと

「骨折り損とはこのことッス……」


「私がデートするから! それで埋め合わせにしてくれないかな! かな!」


「え、ホントっスか? じゃあ、ゲーセンでクレーンゲームに付き合ってほしいっス」


「あ、クレーンゲーム? 私も好きなんだ~ いっしょにやろうよ?」


「おお! やった~、アスカさんとゲーセンデートだなんて、クラスの連中に自慢できるッス! よーし、カッコいいところ見せるッスよ~」


 ちょろい。それでいいのか、稲荷先輩……

 レイジが「うらやま! 血涙が出るぜ!」と悔しがっていたが、それは無視する。


 しかし困った。これで手がかりゼロだ。話が振り出しに戻ってしまった。

 一応、稲荷先輩にも心当たりがないかたずねてみたが、「無い」と一蹴されてしまう。


「青虎くんも災難ッスねえ、よりにもよって変身能力者に狙われるなんて……双子でもなければ、うりふたつの他人なんて、ご近所にいるはずがないっスよ」


「そうですね……俺も本当に困っています……」


「ん? 双子……? ちょい待ち!」


 レイジが何か思いついたようにスマホを操作した。

 通話だ。二言三言、話をした後に、俺にスマホを投げ渡してくる。なんだ?


「えーと、陽花ちゃんに繋いだ。話を聞いてみろ」


 レイジはバツが悪そうにしていた。本当になんだ?

 俺が通話に出ると、陽花はおそるおそるの口ぶりで言う。


『あ、あのお、青虎くん、お姉ちゃんに会ったんですか?』

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