第66話 恋文で釣る

 翌日、アスカ先輩が呼び出しの手紙を書いてくれた。


 変身能力を持つ生徒のロッカーにアスカ先輩が手紙を投函とうかんしたのだ。

 古典的な手法である。アスカ先輩は「果たし状だよ」と大いに笑う。

 ピンクにハートマークの便せんで、ちなみに内容はこうだ。


稲荷いなりくんへ、

 放課後、大切なお話があります。

 いたずらじゃないから、校舎裏に来てください。

 あなたを待っています。

              鳳凰院アスカより』


 果たし状とは名ばかりである。

 レイジが身悶えして、涙を流していた。


「くそっ、稲荷先輩、うらやましい野郎だ。生かしておけねえ」


「そういう話ではないと思うんだが……」


 果たして、稲荷先輩はこの古典的なトラップに釣られてくれるのか?

 その答えは、校舎裏にスキップであらわれた青年の笑顔が教えてくれる。


「るんるんッス~ オレにも春が来たッス~」


「「釣られるのか……」」俺とレイジの心がひとつになった瞬間だった。


 とはいえ、校舎裏で待ち受けていたのは下級生ふたり俺とレイジだ。

 これには稲荷先輩も嫌な顔をする。

 結局はいたずらかと、稲荷先輩が失望をあらわにしたところで……


「待ってたよ、稲荷くん」


 アスカ先輩が、聖女のような風格であらわれた。


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