第65話 アスカ先輩に相談してみる

 放課後、将棋同好会の集いで、俺はアスカ先輩に相談した。


 朝の事情を説明して、助言を請う。


「どうでしょう? 上級生に変身能力者の心当たりはありませんか?」


「あるよ、あるある! お悩み解決は、アスカ先輩にどーんと任せてちょうだい!」


 アスカ先輩は胸を叩いて、頼もしくうなずいてくれた。


「ゆゆしき事態ね! 陽花ちゃんのお顔を使って青虎くんを陥れようだなんて!」


「俺も、どう対応すればよいのかわからず困っています」


 仮に犯人が変身能力者なのだとすれば、問題の根はもっと深くなる。

 陽花だけではなく、レイジやアスカ先輩に変身されてしまう可能性もあるのだ。


 本物と変わらない見た目で近づいてきたら、俺の立場では見分ける手段がない。

 油断を誘って、一刺し……なんて考えるだけで、俺は人間不信になりそうだ。


「困るよね。少なくとも将棋同好会はセーフハウスだと思ってくれればいいよ」


「その場合でも、俺と、アスカ先輩と、陽花ちゃんと、ふたり以上が同席している状況が好ましいな。一対一だと、相手を見分ける手段がなくて、証人もいないわけだし」


 ストレスで胃に穴があくかもしれない。

 だが、俺とレイジが頭を悩ませている手前で、アスカ先輩は能天気に微笑む。


「平気だよ。心当たりはあるって、言ったでしょう?」


 なぜならば――と、アスカ先輩は自信ありげに言う。


「だって、この学園にいる変身能力者って、たったひとりだもの」

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