第14話 鶴山陽花

 お互いに名乗りもせず、アレコレと言い合うのは不毛だろう。


「俺は夜神やがみ青虎あおとら。キミの名前は?」


鶴山つるやま陽花ようかです……」


 気勢をそがれたように、陽花はしゅんと落ち込んでいる。


 自己紹介もせずに、まくしたてた自分を恥じているのかもしれない。


 それでも思うところがあるのか、陽花はおずおずと口を開いた。


「青虎くんは、どうしてあんなひどい喧嘩をしたんですか?」


「それは……」


 どうしてだろうな、それは自分でもよくわからない。


 この場には回答が必要のようだ。だから、俺はすなおな気持ちを答える。


「キミが泣いていたから」


「え、え?」


「許せないと思ったんだ。でなければ喧嘩はしないよ。不毛だ」


「かーっ、聞いたか? 俺もそんなセリフを言ってみたいねえ、よっ、色男!」


 レイジが茶化すと、陽花は顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。


「で、でも、わたしはあなたのことを……」


 嫌いでいいさ。そう、俺が答えようとしたときに、昼休みが終わった。

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