第10話 この世に、キミがいてくれるなら

 鮮血が上がった。リーダー格の男の頭が、地に落ちる。


「次だ」


 また鮮血が上がった。数人まとめて、男女の頭が地に落ちる。


「次だ」


「お、おまえ、こんな真似をして、学園の派閥が黙っているとでも――」


「なら、全員倒すことにしよう。おまえも謝れ」


 またひとり、頭が血だまりに落ちる。

 大勢逃がしてしまった。残った上級生はいまいましげに俺をにらみつける。


「おい無能力者レベルゼロ、おまえ、今、上級生俺たちを倒すと言ったのか?」


 俺は衆人環視しゅうじんかんしの場で、答えなければならなかった。


「答えてみろよ! カッコつけ野郎!」


「なあ、【偽虎】おまえはどう思う?」


「は? おまえ、誰としゃべって……」


 自分の話だ。問わずとも決まっているか。


「ああ、そう倒すと言ったんだ」


 他人の頭を落として、血濡れの刃を払う。

 似合わない労働の対価は、自分が守った女の子の泣き顔だった。


「わたし、あなたのこと、嫌い、です……」

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