第9話 神速

 『信じられない』

 そんな間抜けな顔をした、ココロの頭が、地に落ちた。


 斬り落としたのは、俺だ。


「ココロちゃん!?」


 丸眼鏡の女の子が悲鳴を上げた。


「っ、酷いよ! どうしてこんなことをするの!?」


「見たか? 彼女は頭を下げた。謝ったようだぞ」


 頭を下げたというか、頭を落としたというべきかな。


 俺が上級生を見ると、彼らは乾いた声で笑ってくれた。


「お、オーケー、オーケー、少し違うが、先輩への無礼を許してやるよ」


「なにを勘違いしている? 次だ」


「え?」


「次はおまえたちの番だ、この子に謝ってもらおうか」


「なっ……」


「頭を下げろと言っているんだ」


 場の雰囲気が、凍った。

 頭を下げるか、頭を落とすか、俺はどちらでもいいが。


「俺は、冗談ウソは言わない」

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