第8話 魔王の紅蓮

「あなた、本気なのね……正気を疑うんだけど」


「キミの魔法を見せろ、生徒同士の私的な研鑽は、学園に許可されているはずだ」


「ええ! いいわ! 私もちょうど、むしゃくしゃしていたところよ!」


 俺の挑発に乗って、ココロが平手を振りかざす。


「来なさい! 魔王剣ロードブレイザー!」


 紅蓮の炎を巻き起こして、ひとふりの大剣があらわれた。


 ココロは自分の背丈ほどもある、アンバランスな大剣を高々と振りかざす。


「頭がかちわれても、心臓が爆発しても、どうせ医療魔法で無かったことにできる」


「そうだな」


「わかってるでしょうね! 私と喧嘩するってのは、そういうことよ!」


 俺ひとりどころか、この場の全員をまとめて焼き払える熱量で紅蓮が燃える。


 上級生へのむしゃくしゃを、すべて俺にぶつけるつもりらしい。


 散々と笑っていた上級生でさえ、今はひきつった表情をしている。


「心臓が爆発しても、か」


「――へ?」


頸動脈けいどうみゃくが斬れたなら、それはキミの負けだ」


 紅蓮ぐれんよりも赤い鮮血せんけつが、ココロの首筋から、ふき上がった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る