第7話 偽虎

「キミは、強いな」


 日和見ではない強さを認めて、俺はまぶしく思った。


 俺が、なにをなすべきなのか、それは自分の心が教えてくれる。


 無気力に死んだ心が、今は騒がしくわめくようだ。


 丸眼鏡の女の子をなぐさめるのでは、なく。


 ゲラゲラと笑う上級生に食って掛かるのでは、なく。


 俺は――赤木ココロの前に立った。


「キミのせいだ、赤木ココロ」


「え?」


「キミが悪い。このくだらない騒ぎをおさめたいなら、まずキミが謝れ」


 上級生のバカ笑いがますます大きくなった。


 赤木ココロは訳が分からないと怒っている。


 だが俺は本気だ、本気で言っている話を引っ込めるつもりはない。


「来い、【偽虎にせとら】」


 刀を呼ぶ。【偽虎】……この刀が、俺に与えらえた、ただひとつの魔法だ。


 困惑と軽蔑で俺をにらみつけるココロに、俺は刀の切っ先を突きつけた。


「勝負がしたいなら、俺がやろう。ただし、勝負するのは、キミと俺だ」

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