第6話 裏切らない

 丸眼鏡の女の子は、泣きじゃくる。


 だが、涙を流しながらも、彼女は気丈な強がりを言う。


「わたし……ウソ、つきたくない」


「あーあ、泣かせちゃった! かわいそう!」


 無責任な取り巻きが、はやしたてる。


 謝らないという決意を、上級生の男はゲラゲラと笑っている。


 しかしその決意に、俺は言葉を失っていた。


「ココロちゃんもそうでしょ?」


 赤木ココロも、無力を噛み締めて黙っている。


 弱いなら逃げればいいのに、誰が、そう思わずにいられるだろうか。


 俺は……俺は、言わずにはいられなかった。


「キミは」


「え?」


「キミは、どうして逃げないんだ?」


 つまらない男の、つまらなく腑抜けた問いかけだ。


 泣きじゃくる彼女は、怯えながらも懸命に、笑って、答えてくれた。


「わたしは、ココロちゃんの友達だから。裏切らないよ」

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