第5話 わたしは

 丸眼鏡の女の子が、真っ青になった。


 喧嘩の……暴力の相手に指名された彼女は本気で怯えている。


「ま、待ちなさいよ! 喧嘩がしたいなら、私が相手になるわ!」


「おまえじゃねえよ。レベルなんて関係ないんだろ? なあ、おまえら?」


 集団の圧力に頼った、つまらない詭弁だな。

 喧嘩はいざこざを起こした当事者同士でやるものだろう。


 詭弁だが、レベル7の能力者ココロには耳が痛くもあるのか。

 ココロが困るすがたを、大勢が楽しみ笑っている。


「まあ許してやるよ、『迷惑かけてごめんなさい』って言えたらな」


「誰が言うもんですか!」


「だからおまえじゃねえよ! そっちの眼鏡のお友達さ!」


 上級生が一斉に、丸眼鏡の女の子を見る。


 人慣れしていないようすの彼女には、大きすぎる重圧だろう。


「謝れよ、そしたら、許してやる。おまえが謝れば、お友達も許してやる」


 丸眼鏡の女の子は、高圧的に迫る男に怯えている。


 ココロが怒鳴り散らしているが、今は誰も聞いていない。


「わたし、わた、し、は……」


 その時、彼女は、俺が想像もしないことを言った。


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