第2話 夜神青虎

 夜神やがみ青虎あおとら、俺の名前だ。


 入学式の後に、俺が上級生と揉めたのには理由がある。


 ホームルームを終えた新入生を待っていたのは、部活動の誘いではなく、有能な能力者を傘下に置こうとする学園派閥はばつの勧誘だった。


 俺の無能力を聞いた上級生は鼻で笑って送り出してくれたが、バカにされたと食い下がる世間知らず新入生もいる。いきがって、痛い目を見て、教訓にすればいいさ。


 校門の前で口論をしている女の子も、その手合いだった。


 大勢の上級生を相手に一歩も引かない剣幕で、怒鳴り返している。


 これには俺も、悪い意味でおどろいた。


「私、ウソつきたくない」


 女の子は、上級生に囲まれて、あざ笑われていた。


「徒党を組んで、手下を集めて、それが最強? いいえ、そんなのウソよ!」


 負け犬の遠吠えにしか聞こえないな。


 ひとりぼっちの言い分は、いつの世も虚しく聞こえる。


 その孤立無援の女の子に、通りすがりの俺は呼び止められたんだ。


「あなた新入生? ねえ、あなたもそう思うでしょう?」


 通りすがりの俺は答えた。


「キミを守る前に、俺にはするべきことがある」


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