1223 時雨沢くんは震える 03

「ぷろじぇくしょんまっ……ま? 何なん、それ」


 データが消えたという報告をしたのに、まさか『プロジェクションマッピング』自体を理解されていないなんて。

 僕の特技をパーティーに活かそう思い付いたのは榊山さんだったけど、三津さんは内容を聞いていなかったのか。信頼しすぎじゃないかな。

 何だか気が抜けてしまった。さっきまで絶望と申し訳ない気持ちでいっぱいだったのが嘘のようだ。笑いまでこみ上げてきた。

 三津さんは不満顔で口を尖らす。


「そんな笑わんとってよ」

「あ……違うんです。三津さんのことを笑ってるんじゃなくて、なんか、気が抜けて」


 口元のゆるみを隠すようにホットミルクをふくむ。


「んで、ぷろじぇくしょん何とかは、どういうもんなん?」

「壁や物に映像を映して、模様やストーリーを楽しむプログラミング……パソコン操作ですね」

「ホームシアターみたいなもん、てこと?」

「どちらかというと、プラネタリウムの方が近いかもしれません。結構、大きな物にも映せるので国会議事堂にもしてますし」


 僕の説明を聞いて想像しているのか、プラネタリウムと呟きながら虚空を見つめている。


「なぁ、それってパソコンに頼らんでも、私らでできるんじゃない?」


 ひょっといいことを思い付くこともある、じゃなくて、思い付いてもらった。

 僕たちにはちょっと困った、人ならざる力があることを忘れていた。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る