1222 時雨沢くんは震える 02
食堂に入ろうとしたら、先客がいた。ドアのくもりガラスから光がこぼれているが、誰がいるかはわからない。
もしかして、斑尾さんかな。イライラさせるみたいだから、あまり近付きたくない。
もしかして、綾鳥さんかな。平静を装ってすごく面倒そうな瞳で見てくるから心が折れる。
もしかして、榊山さんかな。プロジェクションマッピングの進行ぐあいを訊かれたら逃げ出してしまう。
もしかして、遊馬くんかな。
「何しとん、そんな所で。寒いやろ、入り」
三津さんだった。ほっと息を吐き出して、部屋に入った。暖房がきいていて、体が冷えていたことを実感する。
六人がけの大きなテーブルが二台並ぶ上には折り紙の輪っかが連なっていた。明日のパーティーに飾るのだろう。
僕はとてもとても頭を抱えたくなって、回れ右をして駆け出したくなった。もうすでにその通りに行動を起こしていた所に声をかけられる。
「せっかく食堂に来たんなら、あったかいもんいれたげる。座っとき」
三津さんはいつだって実家の姉さんみたいだ。何も言わずに僕を甘やかしてくれる。
なんで斑尾さんはこんな優しい人に牙をむき出して怒るのだろう。ちょっとよくわからない。
僕の前に現れたのは、ホットミルク。ちょっとくさく感じてしまうけど、甘くて懐かしくなる香りだ。ひとくち飲んで、とつとつと話す。
「準備してたプロジェクションマッピング、消えてしまったんです」
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