1220 斑尾くんは挑む 04
邪魔にならないように道の脇に移動して、やわらかい腕を離した。まだ堪能したかったが、それこそ三津にしょっぴかれることになってしまう。ありがとうございます、と呟かれた声に導かれるようにして顔を上げた。
「斑尾さんて、やさしい、ですよね?」
真ん丸な目に映るの俺。いつもなら、一瞬しか合わない瞳がこっちを向いている。
中途半端なほめ言葉が妙にツボに入った。こみ上げる笑みを抑えることができない。ほめられて調子に乗っているのだろう。自分でも引くぐらいに心がふわふわとする。
「緊張してるだけだから」
「……………………斑尾さんが?」
かなりの間をあけて、思い出したように瞬きをした顔が確かめてきた。
「そ。だから、大目に見てくれ」
返事が来る前に冷たい手を取って歩き出す。俺も余裕がないので、後ろでたたらを踏ませてしまった。え、手、手っと聞こえるが嫌がってはないようなので黙殺する。
門限は七時だ。買い物の合間にコーヒーぐらいなら飲めるだろう。守る義理はないと思うが、後でからかわれるのは想像しなくてもわかる。
買い物中に絹田の気に入る物でも見つけられたらと無謀なことを考える。浮かれてんな、と自分を諌めながら、陽気なクリスマスソングが聞こえる道を進んだ。
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